タバコの害が循環器・呼吸器に悪い影響を及ぼすことはご承知の通りですが、腰痛にも関連があることが多くの研究や論文で発表されています。
タバコの煙の中には有害な化学物質が200種類以上含まれていますが、この中で腰痛の発症と関わりのあるのは「ニコチン」なのです。
椎間板ヘルニアのある方の喫煙率は、非喫煙者で椎間板ヘルニアのある方に比べ明らかに高く、"喫煙者は腰痛になりやすい"ことが、わかっています。
今回は、なぜ喫煙が腰を痛めることになるかのお話しです。
【喫煙は椎間板を悪くする】
背骨の骨と骨の間には、クッションの役割をする「椎間板」があります。
椎間板には血管がなく、椎間板の周囲の毛細血管から染み出た栄養分を、スポンジが水を吸い込むように吸収しています。
喫煙すると、タバコに含まれる「ニコチン」が、椎間板周囲の毛細血管を収縮させ、栄養が充分に行き渡らなくなり、椎間板を変性させます。
実験で、8週間ニコチンを与えたウサギは、血管の数が生理食塩水を与えていたウサギの1/2程度に減っていたそうです。
栄養の行き渡らない状態が続くと、椎間板の水分が奪われスカスカになり、クッション性が薄くなるため、骨同士がぶつかりとがって神経を圧迫します。
また、椎間板が縮んでバランスが悪くなるため、周りの靭帯がそれをカバーしようと厚くなり、神経を圧迫し腰痛が起こります。
【タバコと椎間板コラーゲンの老化】
椎間板は、コラーゲンでつくられます。このコラーゲンは、ビタミンCにより産生が促進されます。
しかし、喫煙を続けることで、慢性的なビタミンC不足が生じてしまいます。
1日にタバコを1箱(20本)吸った場合、0.5gのビタミンCが失われてしまいます。
ということは、タバコを1本では、約25mgのビタミンCが失われます。
椎間板は非喫煙者でも、加齢と共にクッション性が失われていきます。
ですから、喫煙者はビタミンCを失うことで、さらに椎間板の老化を早めるということになるのです。
喫煙は、「肌の老化も早める」と言われますが、こちらも『ニコチン』が毛細血管を収縮させてしまうためです。血液から運ばれる酸素の量も減り、血行不良になります。
タバコを吸い始めて「最近、肌にツヤがなくなってきたなぁ」と感じたら、目に見えない部分【腰の椎間板】の老化も進んでいるかもしれない・・・ということを思い出してください。